
退職後、同業他社に転職したい—その前に確認すべきことがあります。
企業との契約には、在職中だけでなく退職後も一定の行動を制限する「競業避止義務」が定められていることがあります。知らずに違反すれば、損害賠償請求や法的トラブルに発展するリスクも。
本記事では、競業避止義務の基本や法的効力、違反リスク、そしてトラブルを避けながら円満に転職を進めるための対処法を解説します。
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はじめまして。転職エージェントとして日本全国に向けた職業紹介サービスを提供しているJOBDOOR(ジョブドア)です。 こちらのブログでは転職成功への入り口となるような情報を発信しています。
同業他社への転職は「違法」なのか?

近年、退職者が同業他社へ転職したことによって企業から訴えられるというニュースを耳にする機会が増えてきました。その背景にあるのが、「競業避止義務」です。
これは、元社員が退職後に競合企業へ転職したり、独立して競合するサービスを始めたりすることで、元の会社の利益が損なわれないようにするための制限です。では、これは本当に「違法」なのでしょうか? そして、自分にも関係ある話なのでしょうか?
この記事では、以下のような疑問や不安を持つ方に向けて、実際の法的リスクとその回避策をわかりやすく整理します。
「同業他社への転職って、本当に訴えられることがあるの?」
「契約書に何か書いてあった気がするけど…大丈夫?」
「会社を辞めて独立したいけど、顧客リストを使ったらマズい?」
実際のトラブル事例や法律の基本をもとに、安心して次のキャリアへ進むためのポイントをお伝えします。
「同業他社に転職=違法」になるのはどんなケース?

まず前提として、同業他社への転職が一律で「違法」になるわけではありません。違法かどうかを判断するには、民事・刑事の両面からの視点が必要です。
問題になる主なケースは以下の3つです
1.就業規則や退職時の誓約書に明記されている場合
競業避止義務が明確に記載され、かつ範囲や期間が合理的であれば、法的拘束力を持つことがあります。違反すれば損害賠償を求められる可能性も。
2.労働契約書などで競業を禁止する合意をしている場合
サインした書面がある場合、契約違反として法的責任が問われることがあります。企業に よっては転職先にも通知されるケースも。
3.営業秘密の持ち出しや不正競争防止法違反がある場合
顧客リストや価格表、技術資料など、企業にとって機密性の高い情報を転職先で活用する と、「不正競争防止法」による刑事罰が科される可能性があります。
実際に起きた“同業転職”のトラブル事例

■ ソフトバンク→楽天モバイル:営業秘密の持ち出しで逮捕(2022年)
2022年、ソフトバンクの元社員が、同業の楽天モバイルへ転職する際に営業秘密に該当する機密データを不正に持ち出していたとして、「不正競争防止法違反」の容疑で逮捕されました。
持ち出された情報は、ソフトバンクの通信設備に関する設計データや仕様書など、同業他社にとって大きな競争優位となり得る重要な技術情報でした。この元社員は、在職中にデータをUSBメモリにコピーし、転職先である楽天モバイルに提出していたと報道されています。
この事件では、単なる「転職」ではなく、営業秘密の不正取得・利用が問題視された点が重要です。営業秘密の管理体制が整っていた場合、こうした行為は刑事罰の対象となります。
■ かっぱ寿司元社長:前職企業の情報を不正利用し書類送検(2022年)
2022年には、かっぱ寿司の元社長が、前職であるはま寿司(ゼンショーホールディングス)から機密情報を不正に取得したとして、独占禁止法違反(不公正な取引方法)容疑で書類送検されました。
具体的には、競合店の店舗の立地情報や売上戦略、仕入れ価格といった営業上の内部資料を不正に持ち出し、かっぱ寿司の経営判断に活用したとされています。
このケースでは、不正競争防止法ではなく、公正な競争を阻害する行為として独占禁止法が適用されました。上場企業の経営層による行為だったこともあり、業界全体に大きな衝撃を与えました。
競業避止義務とは?基本の知識とよくある誤解

競業避止義務とは、従業員が退職後に、一定期間・一定の範囲内で元の勤務先と競合する企業へ転職したり、同様の事業を始めたりすることを制限するルールです。企業が従業員に対して機密情報を共有する以上、それが他社に流出しないようにするための予防的な措置として設けられています。
この義務が法的に有効と判断されるかどうかは、いくつかの条件によって左右されます。たとえば、制限される期間が長すぎたり、地理的範囲が広すぎたりする場合には、労働者の職業選択の自由を不当に侵害するとして無効とされることもあります。また、競業を禁止する代わりに退職後も一定の金銭的補償を支払うかどうかも、有効性を判断する重要な要素のひとつです。
よくある誤解として、「書面がないから無効だろう」「口約束なら気にしなくていい」と考える方がいますが、明確な合意が成立していれば口頭であっても効力が認められる場合があります。また、正社員だけでなく、業務委託やフリーランスとして契約していた場合でも、同様の競業制限条項が含まれていることがあります。立場に関係なく内容をきちんと確認し、自身が何に同意していたのかを把握することが大切です。
競業避止義務がある場合の3つの対処法

もし自身の雇用契約や退職時の書類に競業避止義務が含まれていた場合、転職活動を進める前に慎重な対応が必要です。まずは、専門の知見を持つ転職エージェントや弁護士に相談し、自分の状況において義務が法的に有効かどうかを確認しましょう。契約内容が合理的でなければ無効となるケースもあり、プロの視点で判断してもらうことは非常に重要です。
また、転職先に対しては、事情を説明しておくことも大切です。事前に競業避止義務の存在を伝えることで、企業側も法的なリスクを理解したうえで採用判断を行うことができ、後のトラブルを防ぐことにもつながります。
さらに、競業避止義務の内容に応じて、あえて同業を避けた職種や地域を選ぶという選択肢もあります。自分のキャリアを守るために、一時的に方向性を柔軟に調整することも、長い目で見て賢明な判断となることがあるでしょう。
まとめ
同業他社への転職には、競業避止義務や営業秘密の取り扱いといった注意点がつきものです。知らなかったでは済まされないルールもあるからこそ、事前の確認と慎重な判断が欠かせません。
とはいえ、「せっかくの経験やスキルを無駄にしたくない」というのも本音ではないでしょうか。
転職エージェントJOBDOORでは、あなたのこれまでのキャリアを活かしながら、リスクを回避し、安心して働ける環境を一緒に探します。
競業避止義務の有無を含め、企業の実態に詳しいプロがサポートしますので、まずはお気軽にご相談ください。
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